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QMS定着への奮闘日記

No.108 たかが「記録」…されど「記録」

2013年6月27日

  前回から検討している「品質記録の役割とその有効性」

   当社では従来、業務プロセスの運用に関わった書類・記録は、全て「品質
   記録」として認識し、保管管理していた。
   しかし本当に保管管理を要する「品質記録」なのか…という問題に当たっ
   た。

   ISO規格要求事項まで立ち戻って、見えた結論が「手順が確立した上で、
   前工程の効果的な運用で次工程の有効的な運用に移った時、前工程の品質
   記録は役割を終え、また保管管理の必要は無い
」。

   即ち、当社は「品質記録」の認識が浅かったために、過剰に記録を保管管
   理していた。…この発見は凄い改善だ!

  この議論の発端である「打合せで使用した前回成績書を、今回JOBが完
   遂した後も品質記録として保管管理している」という問題はこれで解決!
   記録の管理も幾分スッキリした…と思った矢先、別の疑問にぶつかった。

   それは「前回成績書を保管しないことで、もし当該JOBの校正スペック
   がこう決まった根拠を求められても示せるのだろうか…?」
   これは内部監査でもよく指摘に挙がったことでもあり、そのために「前回
   成績書」を品質記録として管理していたのだが、上記のような結論に達し
   た今、校正スペックの根拠をどう証明するか…

   当社ではお客様の機器を初めて校正する際、安全・確実な校正スペックを
   決めるために『個別校正仕様書』(例図参照)を用いて打ち合わせる。
   謂わばこの『個別校正仕様書』が校正スペックの根拠になるのだが、この
   記録の保管管理は3年間。
         個別校正仕様書
     例図 個別校正仕様書

   3年間保管した後は廃棄していたが、今後はずっと残さなければならない
   のだろうか…そういえば、そういうことを内部監査でも謂われた。

  この疑問をQMSミーティングで挙げてみた。
   するとトップはこう説いてくれた。
     「確かに『個別校正仕様書』は最初にスペックを決めた根拠となる
      記録。
      しかしそれが翌年には「前回成績書」というカタチになり、今回
      JOBの校正スペックを打合せ、それを基に校正をし、成績書を
      お渡しする。

      使われる書類が何であろうと、お客様が今回要求される校正業
      務を提供し、完遂させる。ビジネスとはそういうものじゃないか。

      初めて校正する機器については、要求スペックを事細かく聞かな
      ければならない。それは品質記録であり、保管管理しなけれなら
      ない。その情報が違うカタチで受け継がれ、代々続いていくのだ
      から、『個別校正仕様書』をずっと持っておくことは意味が無く、
      3年間の管理でも十分。」

  トップの言葉に得心がいったし、安心した。
   内心、この疑問の結論によっては、新たな「記録の管理」が必要になるの
   ではないかと冷や冷やしていたが、トップが考えるビジネスの基本から説
   いて貰ったおかげで納得出来たし、何よりホッとした。

   私はQMS推進者として記録の重要性を分かっていたつもりだった。
   しかし今回「前回成績書」という1つの書類から、品質記録の本質や役割、
   その有効性のみならず、「ビジネスの基本」まで学ばせて貰った、とても
   とても深いテーマだった。

   たかが「記録」…されど「記録」

△ No.109 見えない‘仕事’をしている立場の陰なる功績
▽ No.107 「品質記録」の役割と有効性を考える